「カメオ」とは、浮き彫りという技法のことを言います。
シェルやストーン、象牙や珊瑚、木材や金属まで、使われている素材は様々です。
カメオの起源は紀元前3世紀、ギリシャ時代に装飾品をはじめ、お守りなど
神聖なものとして使われていたことから始まります。
約2千年前の大噴火で火山灰に覆われたポンペイの遺跡を発掘した際、
半貴石に彫刻が施されたカメオが出土したことで明らかになりました。
一般的にカメオという名称が使われるようになったのは12世紀頃からですが、
その精緻な技法の歴史は古代エジプト時代から脈々と受け継がれてきました。
貝や石の上に、極めて緻密な浮き彫り彫刻を施した小さな芸術品、それがカメオなのです。
シェル・カメオのルーツは、船乗りが外国から持ち帰った美しい貝に魅せられた
著名な彫刻家が、その貝に彫刻を施したもの。約2千年前のことです。
以来、その技法は時代を超えて伝承され、発展してきました。
デザインや彫刻技術の熟練度はもちろん、
豊かな想像力と創造性、そして卓越した美的感覚を持った作家にのみ、
マエストリ(彫刻の大家)という称号が与えられます。
一彫り一彫り、作家たちが丹念に作品を仕上げていくその姿からは、
絶え間なく努力を重ね技術を磨いた、先人たちの情熱が伝わってくるようです。
現在、シェルカメオの原貝として多く用いられているのは
サルドニクスという表面が白い貝と、コーネリアンという橙色をした貝です。
一般的にシェル カメオに適した材料は、貝が厚く層によって微妙に色合いが違うものです。
そのため、一枚の貝から製品となるのは、ごくわずかな個数です。
この原貝をまずは約一年間よく乾燥させます。
乾燥した貝は、大まかに半分にカットされます。
半分にカットされた貝は型紙を当て更に細かくカットされます。
カットされた貝は厳選され、確かな品質のもののみ次の行程へ進みます。
細かくカットされた貝は、オパール、ラウンド、四角形など様々な形に整えられます。
様々な形にカットされた貝は掘りやすくするためにスティックに松ヤニで固定されます。
アーティストは、貝の特徴を生かし、顔、女性の肖像、花、ギリシャ神話、風景など
様々なテーマで彫刻を施します。
その結果、類を見ない美しさを誇る小さな芸術品が生まれるのです。
シェルカメオは、機械を当てての彫刻は難しく、
ひびや割れをおこしてしまうため彫刻刀による手彫りとなっています。
そして、貝は凹凸がありその形もさまざまです。
機械を使うより、アーティストたちがひとつひとつ貝の特徴を
見て、触れて、ひとつずつ丁寧に作り上げていくのがシェルカメオの特徴です。
さまざまなアーティストの手によって彫られたシェルカメオは、
その手彫りという技術により柔らかみのある優しい彫りや、大胆に躍動感のある作品まで
数多く作られ、多くの方たちとの出会いを待っているのです。